認知症を発症した場合によくみられる行動として、家の中や屋外における徘徊があります。介護士が認知症高齢者やその家族のサポートをする際には、この徘徊の理由と対策を知っておく必要があるのです。認知症による徘徊は、見当識障害といわれる症状が原因であり、現在の日時や季節、自分のいる場所が分からなくなり、不安を感じて歩き回るというパターンが多いのです。
屋外にいる場合は、自分の家や勤めていた会社を探そうを歩き回ったり、ストレスやいらだちなどから、落ち着ける場所を探して昔住んでいた家や思い出の残る場所を求めて歩き回ったりすることがあります。徘徊の途中で元々持っていた目的を忘れてしまい、あてもなく歩き続け、道に迷ってしまうというケースも多いのです。また家の中での徘徊の場合は、トイレや冷蔵庫へ行こうとして目的を忘れてしまったり、探し物を見つけられずうろうろしてしまうといったケースがよくみられます。
そんな徘徊に適した対応をするためには、頭ごなしの注意をしないことが大切です。じっとしていることを要求されたり行動を制限されたりすると、高齢者の混乱や不安があおられ、症状の悪化につながる危険性があります。家の中を歩き回っている時は、何を求めているかを尋ね、丁寧に案内することがポイントです。
また、人によっては現在いる場所を自宅だと認識できず、自宅に帰りたいと席を立とうとすることもあります。このような場合でも、高齢者の気持ちを尊重し、「まずはお茶でもいかがですか」「今日は遅いので、泊まっていってはどうですか」などと声をかけ、本人が落ち着くのを待つことが大切です。周囲の家族が当惑している場合は、介護士が適切な対応法をアドバイスしましょう。